猫はウイルスなどの感染症の病気が
多いでですが、それと共に多く見られる
のが目の疾患です。
そして、猫の場合は全身性の感染症に
よって目の症状が現れる病気が多いと
いう特徴もあります。
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分かりやすいのが、猫では非常に
ポピュラーな病気の一つでいわゆる
猫カゼと言われるウイルス性鼻気管炎
(ヘルペスウイルス)です。
ヘルペスウイルスは、呼吸器の症状が
主ですが、それと共に結膜炎や角膜炎
など目の症状も現れることが多いです。
また、症状については病状や個体差も
あるため、例えば呼吸器症状だけで
あったり、目の症状の方が重度に出たり
などさまざまです。
つまり、全身性の感染症にかかった場合
には、目にも症状が出る可能性が高く、
逆に目に何らかの症状がある場合、
それは目の病気ではなく、全身性の疾患
の可能性があるということです。
そして、猫の全身性の感染症で
目の症状を伴うものは前述した
ウイルス性鼻気管炎以外にも多くあります。
こちらでは、猫の目の疾患に関連する
全身性の感染症についてまとめて
みましたので参考にしてください。
<猫の感染症と目の疾患について>
猫の全身感染症に伴う目の疾患で
多いのが「ぶどう膜炎」と「脈絡網膜炎」です。
ぶどう膜炎=ぶどう膜(虹彩・毛様体・
脈絡膜の3つをまとめた総称)の炎症
脈絡網膜炎=脈絡膜と網膜の炎症
出典:https://www.fpc-pet.co.jp/
ぶどう膜は、他の眼球組織に比べて
血管が豊富で血流に富んでいるため、
目以外の臓器に発生した感染症の
影響を受けやすい部位なのです。
もちろん、他の目の疾患(結膜炎や
角膜炎、白内障、角膜腫瘍)によるもの
や、外傷やアレルギーなどが原因と
なって発症する場合もありますが、
それら他の目の疾患がなく、ぶどう膜
や網膜などに炎症がみられた場合には
全身性の感染症が疑われるようになります。
そして、何らかの感染症によって
起こるぶどう膜炎などの目の症状は、
感染の急性期(体内で増殖)の後で
現れることが多いです。
<目の疾患を伴う感染症>
猫の目の疾患を伴う感染症で主に
挙げられるのは以下になります。
*Felv(猫白血病ウイルス感染症)
*FIP(猫伝染性腹膜炎)
*トキソプラズマ症
*クリプトコッカス症
*クラミジア症(クラミドフィラ症)
【Felv(猫白血病ウイルス感染症)】
猫の白血病ウイルスは命に関わる
重大疾患の一つです。
レトロウイルス属に分類されるウイルス
で感染猫の唾液(体液)などによって
感染します。
白血病ウイルスは、免疫不全や貧血、
細胞形質転換(遺伝形質の変化)を引き起こし、
リンパ腫など悪性の腫瘍の原因となることが
多く、致死率の高い病気です。
白血病ウイルスが関連する目の疾患は、
形質転換したリンパ球がぶどう膜から
眼球内に入り、ぶどう膜炎を引き起こします。
また、腫瘍細胞が浸潤した場合には
続発性の緑内障が起こることが多いです。
緑内障=眼圧が高くなり視神経が障害
され、視力が低下。
治療:
白血病の治療(抗ウイルス剤や抗がん剤
など)と共に、ぶどう膜炎の対処療法
(主に抗炎症剤)を行なっていきます。
これによってぶどう膜炎の症状が軽減
することもあります。(全身の状態にもよります)
ただし、ほとんどの場合、予後は
不良で、緑内障を抑えることができず
視覚を喪失することが多いです。

【FIP(猫伝染性腹膜炎)】
FIPは猫コロナウイルスによるもので、
それ自体は病原性は弱いですが、猫の
体内で変異すると病原性の高いFIP
となります。
FIPは、以下の2つのタイプがあります。
*ウェットタイプ(滲出型)
腹水や胸水の貯留が見られ、急性の経過
をたどることが多い
*ドライタイプ(非滲出型)
肉芽腫を形成したり、長期的な経過を
たどることが多い
FIPで目の疾患が見られるのは、
ドライタイプで多く、化膿性肉芽腫性
血管炎によってぶどう膜が破壊され、
炎症が起こります。
このぶどう膜の症状は、FIPの他の
症状よりも先に起こることがほとんどです。
治療:
FIP自体が、有効な治療法がなく、
遅かれ早かれ死に至る病気です。
そのため、ぶどう膜炎に対しても
対症療法しかなく、抗炎症剤や抗菌剤
の投与となります。
これにより一時的にですが、症状の
改善が見られることが多いです。

【トキソプラズマ症】
トキソプラズマはアピコンプレクサ門に
属する原虫の一種に感染することで
発症します。
人畜共通感染症として知られ、猫から
人へ感染するというイメージも強い病気
ですが、猫を介さずに感染することも
多い比較的ポピュラーな病気です。
(生肉を食べるなど)
猫のトキソプラズマ感染では、多臓器に
影響を受けてさまざまな症状(発熱、肺炎、
肝炎、心筋炎、皮膚病変など)が現れます
が、その中でも目の症状(主にぶどう膜炎)
は早期に見られることが多く、慢性化
しやすいです。
トキソプラズマに伴うぶどう膜炎は
さまざまで、角膜炎や虹彩炎、網膜の
肉芽腫病変、水疱性網膜剥離、視神経炎
などが見られます。
治療:
治療は、トキソプラズマの標準治療の
サルファ剤(合成抗菌薬)やチミジル酸
合成酵素阻害薬(DNAの合成を阻害)などの
投与を行います。

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【クリプトコッカス症】
クリプトコッカスも人畜共通感染症の
一つで、真菌の一種です。
土壌中に広く存在して、主にハトなど
鳥の糞中でよく増殖し、その糞から
空気中に浮遊している菌を吸い込む
ことでの感染が多いとされています。
ただし、病原体を吸い込んだからと
いって必ず発症するわけではなく、
発症には免疫抑制が関わっていると
され、免疫が低下する病気などが
ある場合には発症のリスクが高くなります。
(人ではHIV患者の発症が非常に多いとされています)
クリプトコッカス症による目の症状は
脈絡網膜炎が多く、眼底部に病変が
見られます。
治療:
クリプトコッカス症の治療(合成抗真菌薬
の投与)を行います。

【クラミジア症(クラミドフィラ症)】
クラミジアも人畜共通感染症の一つ
で、人では肺炎の原因や性感染症と
して知られます。
クラミドフィラ・ニューモニエと
いう微生物の感染によって発症します。
猫では主に呼吸器症状と結膜炎が
見られます。
(結膜上皮細胞内で複製する寄生体)
呼吸器症状はあまり重度になる
ことはありませんが、目の症状は、
結膜充血、結膜浮腫、眼瞼痙攣などが
起こり、慢性化することが多いです。
結膜炎が悪化したり慢性化すると
眼球と結膜が癒着して瞼が開かなく
なることもあり、そうなると手術が
必要になります。
治療:
クラミジアの治療のための抗菌薬の
投与と同種の眼軟膏などを併用すると
効果的です。

<まとめ>
目に見られる異変は、目だけの
問題と思われがちですが、前述した
ように猫の目の疾患には全身性の
感染症が関連していることが非常に多いです。
そして、それらの中には命に関わる
重篤な病気も含まれます。
また、治療の遅れによって視覚を
喪失(失明)したり、眼球を摘出しなければ
ならなくなることもあります。
ですから、少しでも愛猫さんの目に
異変を見つけたら早期に受診しましょう。