猫の慢性腎不全は、体の状態や
ステージによって、さまざまな
薬を組み合わせて腎不全の進行
を遅らせること、そしてQOLを
高めていくことを目標に治療が
行われます。
ですから、その猫さんの状況に
よって、いくつもの薬剤などを
総合して最適だと思われる治療が
選択されます。
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その中でも比較的新しい腎不全の
薬として使われているのが、
2014年7月に発売された
『セミントラ』という薬です。
セミントラはシロップのお薬で
猫にも飲ませやすいと言うこと
で、処方もしやすく、また副作用
が少ない薬とも言われています。
ただし、まだ新しい薬のため、
その適応や効果についてはまだ
検証段階の薬であるとも言えます。
そこで実際、セミントラとは
どういう薬でどんな効果や効能
があるのか、また副作用には
どのようなものがあるのかなど
についてまとめてみました。
出展:http://k-dogs.net/archives/384
<セミントラとは>
「セミントラ4mg/ml 経口液猫」
は、動物医療の領域では、世界初の
『ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)』です。
成分は、テルミサルタンで
人用の薬では「ミカルディス錠」
というものがありそれと同じです。
いわゆる降圧剤(血圧を下げる薬)
です。
これまで猫の腎不全の降圧剤は
フォルテコールというACE阻害薬
が主に使われてきました。
ACE阻害薬は、アンジオテンシン
変換酵素阻害薬です。
ARBとACE阻害薬は、どちらも
血圧の上昇を抑えるのですが、
作用するポイントが違います。
出展:http://www.fizz-di.jp/archives/1032830889.html
血圧を下げるという点では、
どちらも効果は同じです。
ただ、セミントラは猫の慢性腎不全
における蛋白尿の減少を目的に
作られた薬ですので、蛋白尿がある
ときに効果的なのはセミントラだと
されています。
ですから、蛋白尿がある場合には
基本的にセミントラの処方が
選択されます。
また、フォルテコールを飲んで
いても、蛋白尿が出るようになると
セミントラへ変更することが多いです。
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<セミントラの効果、効能>
一度ダメになった腎機能は回復する
ことはなく、慢性腎不全の治療は、
残されている腎臓にかかる負担を
軽減する薬を用いて、病状の進行を
抑える内科療法が中心です。
セミントラは、慢性腎不全の進行を
早めるとされている蛋白尿を減少
させる効果があります。
有効成分のテルミサルタンは、
ナトリウムの貯留や糸球体内圧上昇
をもたらすアンジオテンシンIIの
阻害作用があり、ナトリウム利尿の
促進作用や糸球体内圧降下作用に
よって蛋白尿の減少に効果を発揮します。
簡単に言うと、
腎臓にかかる血圧(糸球体内圧)を
降下→腎臓を保護する→蛋白尿を
減少ということです。
この働きによって腎機能の低下を
抑制します。

<セミントラの副作用>
基本的には、副作用の少ない薬と
されていますが、軽度の消化管症状
として、
*嘔吐
*下痢
*軟便
が認められることがあるとされています。
また、稀に肝臓の数値(肝酵素)の
上昇が見られることがあるようです
が、これは薬を中断すれば、数日後
には正常値に戻るとされています。
薬の副作用の程度や頻度から
してみれば確かに比較的安全な
薬であると言えるとは思われます。
また、嘔吐や下痢など、副作用を
疑われる症状が現れた場合には、
一旦中断して副作用か否かを
判定する必要があります。
(嘔吐や下痢などは慢性腎不全の
症状でもあるため)

<セミントラの適応、注意点>
慢性腎不全におけるセミントラの
適応は、
*腎性の高血圧がある
*蛋白尿が出ている
*腎不全が悪化していない
*脱水していない
ことが条件です。
脱水をしている状態で
セミントラを投与すると逆効果
になり、さらに腎機能が悪化する
可能性があるとされています。
ですから、一般的には、
ステージ4のような進行した状態
では皮下輸液をしても完全に脱水
を補正することはできないため、
末期の腎不全では使ってはいけない
とされています。

また、腎不全の初期や中期でも
脱水がある場合などは、皮下輸液
などで脱水を補正しながら投与
する必要があるということです。
さらに、腎不全も末期の状態では
セミントラの降圧効果は期待
できないとされています。
<まとめ>
いずれにしろ、セミントラは
まだ歴史も浅く、その効果に
ついての実績や報告も少ないため、
今後じっくりと検証していく必要
がある薬です。
また、猫の慢性腎不全については、
さまざまな研究がなされてきて
いますので、今後さらに良い
特効薬の開発も時間の問題です。

動物医療のさらなる進歩に
よって、猫の宿命とも言える
慢性腎不全を回避して、愛猫が
長く生きられるように期待したいですね。