猫のクリプトコッカス症って?
クリプトコッカス(クリプトコックス)
という担子菌に分類される真菌(カビ)の
感染により発症する病気です。
クリプトコッカスは、猫だけではなく、
人や犬、他の哺乳類全てが感染する可能性
のあるズーノーシス(人畜共通感染症)ですが
特に猫は感受性が高いとされています。
スポンサーリンク
通常、健康な猫が感染することは
あまりないですが、他の病気で
抵抗力がおちているときや、
免疫力が低下したときに感染しやすく
なります。
そのため、特に子猫や高齢の猫などは
注意が必要です。
また、猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)
や猫白血病(Felv)などに感染している場合なども同様です。
こちらでは、猫のクリプトコッカス症
について原因や症状、治療などを
まとめてみましたので参考にしてください。
<原因や感染経路について>
クリプトコッカスという真菌は、
特にハトなど鳥類の糞便に多く存在します。
そしてそれらの糞便に汚染された周囲の
土の中や空気中に浮遊しています。
この病原体を、鼻や口から吸い込む
ことで感染します。
そのため、公園や砂場などのハトなど
鳥類がたくさんいるようなところにいる
外猫さんなどは感染のリスクが高いと言えます。
完全室内飼育でお外に出ない猫さんの
場合には、感染リスクは低いですが、
飼い主さんがそのような場所に行って
靴の裏にハトの糞便を付けてきてそれを
飼い猫が吸い込むことによって感染する
可能性もあります。
ただし、「健康な猫が感染することは
少ない」と前述したように、この病気の
発病には、免疫機構が大きく関わっています。
つまり、この病原体が体内に侵入した
としても正常に免疫機能が働いている
健康な猫では発病するリスクは低く、
・FIV(猫エイズ)
・Felv(猫白血病)
・FIP(猫伝染性腹膜炎)
・糖尿病
・腎不全
など、免疫反応が低下する病気に罹患
している場合が易感染者となることが
多いです。(またステロイドなど免疫抑制剤
の継続投与など)
*易感染者:
免疫力の低下(感染防御機能の障害)により、
通常では感染することなく生体に症状が
出ない微生物によっても、容易に感染を
起こし、症状が出やすい状態。

<症状について>
クリプトコッカス症では、
さまざまな症状が見られますが、
一般的なものとしては、
・呼吸器症状(鼻水や膿や血の混じった鼻汁、クシャミ)
・眼の炎症(網膜炎・ぶどう膜炎)
・消化器症状(下痢や嘔吐)
・食欲不振 、元気消失、体重減少
・顔面(特に鼻の周囲)にしこり 肉芽腫など皮膚病変
などがみられます。
基本的には、呼吸器症状が最初に
みられることが多いですが、他に
目立った症状はなく、目の症状や
皮膚病変のみが出現する場合もあります。
また、さらに進行して、
クリプトコッカスが中枢神経系に
感染すると
・てんかん発作(けいれんや麻痺)
・運動失調・意識障害
などが見られます。
スポンサー リンク
<治療方法について>
クリプトコッカス症は、
鼻汁や尿などの細胞診検査によって
病原体を検出、皮膚など病変部の生検、
または抗原検査(外注検査)によって診断されます。
治療は、抗真菌剤の投与がメインとなる
内科的療法が行われます。
・フルシトシン
・アムホテリシンB
・イトラコナゾール
・フルコナゾール
・ケトコナゾール
など。
(皮膚病変がある場合には、抗真菌剤の
外用薬も併用)
中枢神経症状の有無によって薬剤
の選択は異なります。
中枢神経症状がない場合には、内服薬
で対処が可能ですが、中枢神経症状が
ある場合には、注射薬が必要になることも
あります。
(脳には血液脳関門があるため、
一般的な薬剤が届きにくい)
抗真菌薬は、副作用が強いものも多く、
また、中枢神経系での効果もさまざま
なため、薬剤の選択が難しく、途中で
薬剤の変更が必要になることも比較的
多くあります。
また、その他の症状に応じて
対症療法を併用して治療を行っていきます。
クリプトコッカス症は、適切な治療が
行われれば完治する病気(約2~4週間)で
すが、進行して中枢神経に達して神経症状
があるような場合は治療が長引いたり、
予後が不良なこともあります。
特に、発病には免疫力低下を引き起こす
他の病気がある場合も多く、基本的にそれら
の病気は、完治が難しいものがほとんどなので、
その場合には、治療に時間がかかりますし、
クリプトコッカスの発症によって元の疾患
が悪化する可能性も高く、注意が必要です。

<まとめ>
クリプトコッカス症は、
環境中に多く浮遊しているので、
確実な予防法はありません。
なるべく室内飼育を徹底し、普段から
猫さんの健康維持に気をつけて、ストレス
を与えないよう、生活環境や衛生面での
管理をしていくことで感染のリスクを
低くすることができます。
また、クリプトコッカス症は、人も
感染するズーノーシスであり、飼い猫
から感染する可能性もありますが、
前述したように環境中に存在して
いるため、猫を介さなくても感染します。
(猫を飼育していない人での完成例も
多く報告されています。)
そして、人の感染においても免疫機構
が関係していますので、健常な人では
発症しにくい疾患です。
猫同様、免疫力低下、免疫抑制がある人は
ハトが多くいる場所などへの出入りは
控えるなど注意してください。
またもし、そのような感染のリスクが高い
人の飼い猫がクリプトコッカス症を発病
した場合には、飼い主さんも早期に医療機関
を受診するようにしましょう。