猫のてんかんは、発症率が1%未満と
多い病気ではありませんが、確定診断
が難しい病気の一つです。
てんかん発作ではけいれん症状が
見られるのが一般的ですが、発作の
状況やけいれんの状態も個体差が
ありますのでそれがてんかんとは
分からないような発作の状況もあります。
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また、猫は犬と違い、常に人の側に
寄り添っているわけではないため、
もしてんかん発作が起きていても
気付きにくいというのもありますよね。
てんかんでは、その発作が起きた時の
状況などをしっかりと観察することも
大事になりますが、猫の場合はちょっと
難しいのもあると思いますが。
こちらでは猫のてんかんの
原因や症状、治療法や費用などについて
まとめてみましたので参考にしてください。
<猫のてんかんの原因について>
猫のてんかんとは、慢性の脳の
病気で脳内の神経回路がショートして
突然発作が起きる病気です。
脳は、たくさんの神経細胞が繋がって
情報伝達のシステムをつくって
いますが、この情報伝達システムの一部
が過剰に働いて興奮状態となり脳波に
異常が起こります。
原因としては、若齢の猫で発症
する場合は、
*ウイルス(伝染性腹膜炎など)
*真菌(クリプトコッカスなど)
などによって、髄膜炎や猫虚血性脳症
を起こして発症することが多いです。
また、遺伝的な要因がからんでいる
場合もあります。
そして、7歳以上の高齢で発症する
場合の原因は、脳腫瘍や真性多血症
(赤血球が増加する病気)などによる
ものが多いとされています。
また、まったくの原因不明なことも
多く、原因を特定するのは難しいです。
そして、てんかんを診断する検査
というものがありません。
ですから、まずは飼い主さんから
の猫の発作の状況を詳しく聞く。
そして他に同じような発作を
引き起こす病気の可能性がないかなどを
検査して、そのどれにも当てはまら
なければてんかん発作の可能性が
濃厚となります。
たとえば、てんかんのような症状を
起こすものには、低血糖や尿毒症、
肝性脳症や心疾患による失神など
があります。
また中毒も疑われることがあります。
これらは血液検査やレントゲン
などである程度は分かります。
それ以外では、
*脳波検査
*画像診断検査(CTやMRI)
*脳脊髄液検査
などの精密検査を行えば脳の病気や
異常などが分かりやすいですが、これら
はいずれも全身麻酔が必要になる検査です。
また、一般的な個人の病院では
行える設備が整っていないことが
多いです。
ですから、ほとんどの病院は
できる範囲の検査で他の病気の有無
を確認して当てはまらなければ
てんかんと診断して治療をはじめることが
多いです。
どうしても精密検査が必要だと
判断されれば、それらの設備がある
病院へ紹介される場合もあります。

<てんかん発作の症状について>
症状はまさに発作ですが、部分的
なものか全身的なものかの2種類
に分けられます。
意識が残っていて体が動かないだけか、
もしくは体の部分的なけいれんの
場合は脳の一部にショートが起こっていると
考えられます。
意識の確認のために声をかけて
反応をみてください。
全身のけいれんの場合は意識はありません。
突然パタンと倒れ、体をのけぞらす
ように突っ張るのが一般的です。
それから手足を激しくけいれん
させる状態がしばらく続くときや、
ゆっくり手足を突っ張る状態の
繰り返しのような場合もあります。
この時に鳴き声をあげたり奇声を発する
こともありますが、これは苦しくて声が
出ているわけではありません。
無意識なものです。
そしてこの全身のけいれん自体は
長くても2~3分でおさまります。
その後、何事もなかったかのように
なる場合もあれば、1時間以上ふら
ふらしている場合、また長い場合
には数日にわたりボーっとなることもあります。
てんかん発作の程度や長さ、その後の
状況もさまざまです。
<発作の状況を詳しくメモするのが大事>
基本的に発作を起こしたときを
確認できるのは飼い主さんだけです。
たまたま動物病院に受診された
ときに発作が起きれば獣医師も
確認できますが、そんなことは
まずありません。
発作の状況はてんかんの診断に
重要な材料となります。
ですから発作がおきた時の状況を
なるべく細かく観察して、獣医師
に説明できるようにメモしておくことが大事です。
・発作をおこしたときの状況
・発作はどこから始まったか
・意識はあったか
・発作がおさまるまでの時間
・発作のあとはどうなったか
・発作を起こす前に普段と違った行動があったか
・発作を起こす前に環境変化など何かあったか
・天気や気温など
・完全に回復するまでの時間
このくらいの情報がわかるといいです。
最初はビックリしてそれどころ
じゃないと思いますが。
てんかん発作は頻度はさまざまですが、
繰り返しおこります。
次からはなるべく観察しましょう。

てんかんと診断されて、治療に
入った後も薬の効果をみるために、
てんかん発作の観察は非常に重要となってきます。
また、発作を起こす時の状況が分かって
くれば、ある程度発作が起こるのを
予測できるようにもなりますので心の
準備もできるようになってくると思います。
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<治療法について>
猫のてんかんの治療は、
飲み薬による内科的療法が
メインとなり、抗てんかん薬を
投与するようになります。
また猫の場合はタウリンが
てんかん発作を減少させる効果が
あるとされているので抗てんかん薬
と併用してタウリンも使われることが多いです。
抗てんかん薬は通常、1日に2回、
朝晩の投与となりますが状態によっても
頻度や量は変わります。
副作用やてんかん発作の状態を
観察しながら少ない投与量から
スタートします。
てんかん発作は長期にわたって
薬を飲んでいかなければいけない
ので、お薬の投与量はとても大事になってきます。
発作の頻度が増えないように、
かつ最低限の薬の用量で維持して
いけるように、状態を見ながら
調整が必要です。
定期的に血液検査をしながら、
体の状態や副作用が出ていないかを
チェックしていくようになります。
抗てんかん薬は、種類によっても
異なりますが、長期投与の副作用として
代表的なものに肝障害が挙げられます。

<治療費について>
てんかん発作の治療費は、
はじめにてんかんの診断を下すため
の検査費用とその後はお薬と定期的
な検査代になります。
・初診料(診察、再診料)
500円~3.000円
・血液検査
5.000円~10.000円
・レントゲン
3.500円~7.000円
・ウイルス検査(状況による)
3.500円~10.000円
・注射
1.200円~2.000円
*場合によって最初だけ
抗てんかん薬や炎症止めの
注射をすることも
・飲み薬(一週間分)
1.000円~2.000円
その後は、
定期的な通院(2~4週間間隔が
多い)で診察や血液検査と飲み薬
をもらうようになります。
薬は長期的、基本的には一生継続が
必要になります。
(てんかん発作の状況によって、
投与量などは変わってきます)
もし、脳内の詳しい検査を望む
なら、大学附属の動物病院や、
大規模な動物病院などでCTや
MRI検査などを受けることになります。
その場合の費用は
10万円~30万円ほどになります。

<まとめ>
猫のてんかんは、抗てんかん薬
による治療で発作を80%近く
抑えることも可能です。
(原因にもよります)
最初は少しづつ発作を減らして
いくことを目標に長い目で見守って
いきましょう。
数年かかって発作が減ってくる
なんてこともあります。
ただし、てんかん発作は進行してから
では、薬の効果が十分に得られないことも
あります。
発作の回数や状況をよく観察して
獣医師と最善の治療について相談
されてくださいね。
そして絶対にやってはいけない
ことが、発作が減ってきた
(なくなった)からと言って勝手な
判断で薬をやめることです。
今まで、薬で抑えていたショートが
一気に広がってしまい、興奮したり
最悪の場合亡くなってしまうこともあります。
またそうなってしまうと、それまで
の薬では抑えきれなくなってしまう
こともあります。
定期的な検査とおウチでのお薬と
観察がちゃんとできれば長生きも可能です。
てんかんは、一生付き合って
いかなくてはならない慢性の脳疾患
ですが、何年間も薬を飲みながら、
元気にしている猫さんもたくさん
いますから。